アユ釣りマガジン on sight

小澤剛はなぜ背バリを付けるのか

最強トーナメンターが覚醒した理由に迫る【2】

編集部=撮影・文

  • テクニック
小澤剛はなぜ背バリを付けるのか

 小澤剛さんにとって、なぜ背バリは強力なアイテムになり得たのか。その理由に迫るインタビューの続編。故・木全崇博さんに多大な影響を受けた2:1バランスのルーツやシングル背バリの理由、ハナカンに対するこだわりにまで話は及んだ。

ーー本題ですが、小澤さんはなぜ背バリなんでしょうか?

 まず最初に、過去の歴史を振り返って、背バリやオモリを使う人が、圧倒的に強いことが多かった。ノーマルで驚異的な成績を残している人がほとんどいない。僕の周りを見てもそうでした。
 あとは自分の感覚。引いたときに粘る。オトリがついてきたくても、ついてこられない感じが自分の手にはしっくりくる。だから、背バリを付けた方がプラスアルファがあるのかな、と思っていますね。

「オトリがついてきたくても、ついてこれない感覚」が重要という。引き釣りでもオトリが引けさえすれば釣れる、というわけではないのが難しいところ

 飯田利巳さん(小澤さんと同じ巴川遊鮎遊所属。短竿使いの名手)は掛かる姿勢になっている時間が長いといいますね。それは僕の中では軽い前傾姿勢と、水平の姿勢をくり返すというか、フラフラする感じ。水中撮影のオトリを見ても泳いでいないというか、流れに乗ってるだけのことも多いじゃないですか。その感じを出しやすいのだろうと。それに野アユが尾ビレを激しく振って流れに定位しているところなんて見たことありませんし…。

オトリが軽い前傾姿勢をするためか、掛けバリは長めに出すことが多い

ーー 初めて背バリを使ったのは?

 10代ですね。23歳のころには、ごく楽背バリが発表されたんですが、作ってみたけど面倒くさいし、理解できなかったですね。当時は使い古したハナカン周りからフック式サカバリを切り取って、ハナカンのすぐ上にセットして使ってました。
 オトリが弱ったりしたときに効果があるとか、雑誌で読んだりしたのが使うきっかけでしたね。ただ、やはり思ったのはオトリが引きにくい、ついてきにくいということですね。

ーー フルタイムでの使用ですか?

 いや、シーズンを通して1割なかったですね。背バリを一日単位で付けるようになったのは30歳を過ぎてから。木全さんについて、1カ月くらい一緒に漁師をしていたんです。それからですね。

ーー 背バリとともに飛躍しましたね。

 そうですね、ジャパンカップで兄さん(小沢聡さん)とワンツーのときなんかはオール背バリですもんね。多分今とほとんど変わっていません。試行錯誤はしたけど、木全さんのバランスですね、1対2。
 木全さんがそういったかどうかはおぼえてませんけど、それまで見たことのないバランスだったですからね。「これなのか!」と兄さんと話し合って試してみたら具合がよくて、それから今の形になりましたね。でも今は1対2じゃないですけどね。

背バリの黄金法則、1:2のバランスを木全さんから学んでから剛さんの快進撃が始まった

 昔はそのバランスにこだわって、わざわざ結びコブを作ったりとかしてましたけど、多少バランスを変えても違いは感じないですし、前が短いことがキモだということが分かりましたからね。そのかわりハナカンをフック式にして、環の部分で少しでも高くなるようにしました。

ーーフックハナカンになったのはそういう意味もあったんですか。あと、ハナカンは回る方がいいとか?

 これは受け売りで、水中に潜って見た大澤克幸さん(和良鮎を守る会)から聞いた話です。昔、多くの名人たちが「前後に動かないとダメだ」とよくいってたんですけど、それだけじゃないと。実際は左右方向にもよく動いているらしいですね。
 丸ハナカンでもフック式でもそうですけど、しょっちゅう継ぎ目で引っ掛かってるんです。ということは左右にクルクル動いているんですよ。その動きがスムーズじゃないと、オトリが横に動くときや、逃げるときに不自然になるらしいです。すごく嫌がるみたいですよ。
 だから、ハナカンは小さすぎてもうまく回らない。なるべく円形がいいし、少し大きめのもの。5mm以下で形が悪いとホント最悪ですね。たとえば、凧(四隅から糸が出ていて、支点で1本になるタイプ)と同じ理屈だと思うんです。支点が凧に近ければブレると思うんですよ、遠くなればなるほど(不安定な動きを与えても)干渉しにくくなると思うんですよ、きっと。
 ハナカンは大きい方がオトリに対する干渉が少なくなるというか、多少変なバランスになってもカバーしてくれる。理想は、ワンタッチなら6~7mmくらいじゃないですかね。丸ハナカンならきれいに動くから6~6.5mmでいいと思うんですけど。

中ハリスを左右に動かすと、それにつれてハナカンが回る。小さ過ぎたり形の悪いハナカンだとこの動きがスムーズでなくなる。また、シングルの背バリも左右に動いていることにも注目したい。細軸のハリを使うのは動きに追従しやすいからだという

ーー 同時に背バリも動く必要があるんですか。

 否定的にとらえてほしくないんですけど、V背バリは動かないんですよ。潜るときの姿勢はいいということなので、潜らせて糸を緩める釣りにはいいんじゃないかと思いますが…。シングルはすごく(左右に)動くんですよ。

ーー すると背バリはまっすぐ縦に打つ方がいいのでしょうか?

 貫通させるとダメですが、多少横向きでもポンと打つくらいなら問題ないです。僕のやり方だと前に糸を張ればハリが起きるので、あまり関係ないですね。

ーー ごく楽背バリでないのはどうしてですか?

 オトリが入りすぎて「重い」のと、頭を下げる角度がきついからです。

ーー ウレタンゴムは使いませんか?

 上方テンション系の釣りがやりにくくて、僕はやめました。引くだけならかなり使いやすかったですけどね。何でやりにくいのか分からないんですが…。

ーー なるほど。もう秘密はありませんか?(笑)

 そうですね(笑)。僕にはシングルの背バリの方が向いていると思いますね。糸を緩めないですからね。だから、テンション系の釣りをする人にはシングルでしょうかね。

2020/02/26

この記事はアユ釣りマガジン2013に掲載されたものを改訂、再編集しています
肩書き等は当時のままにしていますのでご了承ください

Facebook

@ayumagaOfficial

Facebook

ayumaga_official