今回は取材でも釣行でもありません。
5月上旬、地元漁協のアユ放流とカワウよけの糸張りに参加してきました。
ほぼ全国的に厳しい経営が続く内水面の漁協ですが、その要因のひとつがカワウの食害といえます。対策としては猟友会の協力による駆除(猟銃による)や、防鳥用の糸を張ることがおもな方法です(併用も多い)。ただ、いずれも決定打ではありません。猟銃による駆除は住居の近くではできませんし、糸張りは大きな河川では不可能です。
そもそもカワウというやつは賢くて、普段そこにいなくても魚を放流するとやってきてホントに根こそぎやられてしまいます。車である程度近づこうとしても、殺気を感じるのかすぐに逃げてしまいます(何もしない車は近づいてもなぜか逃げない)。ナンバーを覚えられている、という話も決して笑えません。
糸張りのお手伝いはここ数年参加していますが、これがなかなか大変な作業です。栃木県水産試験場の高木優也さん(アユマガ本誌でもご存じ、腕利きのトーナメンター!)にお聞きしたところ、流程の1〜1.5倍が目安。つまり10kmの釣り場なら10〜15kmの糸を張らなければならないということです。
一日2kmの糸張りが限界
当日の朝は役場前に集合。担当エリアに分かれて2人1組のペアで作業を進めます。右岸と左岸に分かれて糸を張っていくのですが、いくら小さな川とはいえ手作業では効率が悪すぎます。そこで活躍するのがオモリとスナップをセットしたスピニングタックルです。
手順としては組合員Aさんが防鳥糸をスプールごと持って対岸に渡り、組合員Bさんがそこに目がけてオモリをぶん投げます。Aさんは糸の端を木などに結んで、糸の途中にスナップを引っ掛けて合図を出します。Bさんがリールを巻くのに合わせてAさんが糸を出していくとV字状に張れるというわけです。この繰り返し。
この方法は最後まで糸を切る必要がないのがいいところ。他の河川ではどうか分かりませんが、ウチの漁協ではこんなやり方です。
こう書くと楽勝に思えますが、比較的動けるペアが頑張っても半日でスプール2巻きが限界。確か1巻きが500mだから2巻きで1km。一日頑張って2kmが限界でしょうか。場所によってはペースが落ちますし、物理的に糸を結べないケースもあります。
そして何より組合員数が少なく高齢化も著しく、想像するよりもペースは上がりません。かゆいところに手が届くようにはうまくいかず、理想と現実には大きなギャップがあります。
放流に水合わせはない!?
糸張りを終えた翌日には放流です。放流のお手伝いは初参加なのでなんだかワクワクします。
当日は滋賀県の業者さんがアユを運んできてくれるので最下流部に集合です。組合長ともうひとりは午前2時出発で滋賀県に向かい、アユを積んだトラックと一緒に戻ってくるのですが、トラックについていくのに必死だったそう。水産系のドライバーはスピードスターが多いそうです(笑)。
放流といえばホースでドバドバというイメージがありますが、ウチの川は放流量に限りがあるので基本はバケツ使用(要所はホースも使います)。道路沿いの流れや橋の上からロープを2本セットしたバケツに魚を入れて下ろしていきます。ロープはバケツの取手と底にセットされており、バケツが水面に着くと底にセットしたロープを引いてひっくり返します。
が、高い橋ではロープが短くてギリギリ水面にバケツが届かず、アユにダイブしてもらうこともしばしば(笑)。大丈夫かな? と最初は心配しましたが、「このくらいで死ぬような魚なら、どっちみちあかんわ」とベテラン組合員。確かに魚は元気に上流へ泳いで行くのでひと安心。
真夏の釣りではオトリカンに少しずつ川の水を入れ、水合わせをすることもありますが、放流ではそのようなことが一切なく驚きでした(詳しいことは聞きそびれました)。
放流は半日で終わり、その後は糸張りの続きをおこなって終了。それにしても小さな河川でこれだけ大変なのだから、大きな河川では想像もつきません。釣り人目線だけだと漁協に対しては文句のひとつも言いたくなることが多々ありますが、こうして放流や糸張りに参加してみると、遊漁料さえ払えば言いたい放題が許されるとも思えません。
そういえば各地の河川で名のある釣り人が組合長に就任されていますが、釣り人自らが漁協に積極的に関わっていく時代になったのかもしれませんね。