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島啓悟の超実践的キャッチ術

状況に合わせた4パターンの引き抜きをマスター

編集部=撮影・文

  • テクニック
島啓悟の超実践的キャッチ術

友釣りの第一の醍醐味がオトリを泳がせて野アユを掛けることだとすれば、第二の醍醐味は掛けた野アユをダイナミックに引き抜いてタモでキャッチすること。そんな友釣りの決め技を、釣り姿の美しさで定評のある島啓悟さんがレクチャー。

パターン1/タモ先抜き <水深がある不安定な足場で威力>

 引き抜きの基本形は、タモを先に腰から抜いて竿にあてがいながら引き抜く方法と、タモを腰に差したまま引き抜き動作に入り、アユが飛んでくる間にサッとタモを腰から抜き取ってキャッチする方法の2種類がある。これらのうち、トロ場や瀬で活用したいのが、前者のタモを竿にあてがいながら引き抜く方法だ。

タモを持つ手で竿を握り込まないように。破損の原因となるので、添える程度でいい

 「水深があるところでは、体が不安定になりやすいので、先にタモを抜いて竿に当てがっておけば、引き抜いてからタモを差し出すことに集中できて取り込み精度が上がります」と島さん。十分な体勢を作ってから引き抜き、オトリと野アユを左腰の辺りでキャッチするのが、もっともスマートな取り込み方だ(※島さんは右利き)。

 

1、掛かりアユを浮かせる

 野アユが掛かれば竿を起こし、急流の中でグッとためて竿の弾力を発揮できる体勢を作る。

 

2、タモを腰から抜く

 竿尻を腰に当てて右手で竿を立てたまま、左手で腰からタモを素早く抜く。

 

3、タモを竿にあてがう

 タモを持つ左手を竿に当てがい、取り込める体勢を十分に作ってから、竿をさらに立てて野アユを水面に浮かせる。

 

4、持ち上げるように竿を立てて引き抜く

 野アユが抵抗する力(泳ぎ)がフッと抜けた瞬間に一気に竿を立てて(持ち上げるようにして)思い切って引き抜く。

 

5、タモを構えてキャッチ体勢を作る

 オトリと掛かりアユが飛んでくる軌道を竿を持つ右手で微調整しながら、左の腰付近にタモを構えてキャッチできる体勢を作る。

 

6、オトリと掛かりアユをキャッチ

 飛んできたオトリと掛かりアユをタモでキャッチ。左の腰の辺りでキャッチするのが理想的。

 

【ワンポイントアドバイス】

引き抜きのしやすさは、釣り場の水深と手尻の長さによって大きく変わる。水深が浅いチャラ瀬では、手尻(ハナカンの位置)が竿尻よりも10~20cm長くなるように設定すればいい。トロ場や瀬では手尻を竿の長さトントンから10cm以内に設定する
シーズン初期は練習の意味合いも兼ねて枠径36cmのタモを使用。中期以降やトーナメントでは39cmを使う

パターン2/タモ後抜き <両手でためてコントロール重視>

 チャラ瀬や流れの緩い浅場では、アユを引き抜いてからタモを手に取る後抜きでキャッチする。「体が安定している場所なら、両手で竿をしっかりためることとコントロール性を重視します。アユを引き抜いてから飛んでくる間にタモを構えても十分に対応できますからね」と島さん。

掛かりアユが抜けてきたら腰のタモを抜くが、あわてておこなう必要はない

 タモはサッと手に取って抜き取りやすいように柄を腰の左側にさして、枠が体の前にくるようにセットしておく。腰の後ろにさしておくと釣りの邪魔にならないが、掛かったときに素早く抜けなくなる。タモはエンドロープでベルトとつないでおくと安心だ。エンドロープでつないでいないと、知らない間に流失していることがある。

 

1、両手で竿を立てて掛かりアユを浮かせる

 

 竿の弾力が生かされるように、両手で竿を握りながら十分に立てて掛かりアユを浮かせる。

 

2、両手で抜いてタモを抜く

 オトリが水面を割ったところで、タイミングを見計らい竿尻を上げて引き抜く。直後に左手はタモの柄を握る。

 

3、右手で軌道を調整してタモへ

 竿を握る右手で飛んでくるアユの軌道を調整しながら、サッとタモを引き抜いて腰の左側で構える。

 

4、タモを構えてキャッチする

 アユが飛んでくる軌道上にタモを構えてキャッチ。体が安定していれば、アユの軌道が多少ズレても対応できる。

 

【ワンポイントアドバイス】

「やり取りの中で竿が一番弾力を発揮できる角度を作ってから引き抜き動作に入ること。竿が十分立っていれば、腕力を使わなくても竿が自然とアユを持ち上げてくれます」
釣り師の背後から見て、竿を垂直に立てて引き抜くとアユが真正面に飛んできてキャッチしにくくなる。竿を少しだけ左に倒して、腰の左側に構えたタモに向かって飛んでくるようにコントロールするのがコツ

パターン3/振り子抜き <上流に飛ばして戻ってくるのをキャッチ>

 北陸の激流河川として名高い福井県九頭竜川に代表される引き抜きが、アユをいったん後方(上流側)に飛ばして取り込む振り子抜きだ。

 「九頭竜返し(返し抜き)とよくいわれますが、地元の漁師さんたちが実践しているのは振り子抜きだと思います。短めでガチガチの硬い竿と太い糸を使って大アユを抜き、そのまま後方に飛ばしたあと、振り子のように戻してから糸を持ってタモに入れます。この間、アユは宙に浮いたままですから、タモで直接キャッチすることもできます」

激流で磨かれた技だが、普段の釣りにも応用ができる

 通常の引き抜きで軌道が大きくそれてしまったとき、一度後方にやりすごして振り子抜きにスイッチすれば、無理にタモを出し、枠に当ててバラしてしまうなどのリスクを減らすこともできる。

 

1、竿をためて掛かりアユを浮かせる

 竿を両手で握ってしっかりためながら立てて、一気にアユを浮かせる。

 

2、抜いてから振り子のように後方へ

 引き抜いたら自分の右側(左岸の場合)を通過させながら振り子のように後方に移動させる。

 

3、竿で抜いたアユの勢いを止める

 後方に飛ばしたところで、アユの重みを竿に乗せて勢いを止める。

 

4、空中に浮かせたまま戻す

 アユを空中に浮かせたまま、振り子が戻ってくるように自分の前に戻す。

 

5、ハナカンの近くをつまむ

 なるべくハナカン近くの中ハリスやツケ糸をつまむ。水中糸をつかむと切れることがあるので注意。

 

6、タモの中へ入れてフィニッシュ

 アユを吊り下げてタモの中に入れる。慣れてくれば振り子で戻ってきたときにタモで直接キャッチしてもいい。

 

【ワンポイントアドバイス】

野アユが掛かり、竿を寝かせて耐えているときは引きをセーブできるが、竿を立てた途端に流れ下ろうとする。もたもたすると主導権を握られるので、竿を立ててから抜くまではできるだけ迅速にするのが鉄則だ。「竿の弾力が十分に生かせる体勢が整ったら、すぐに竿を立てて引き抜いた方が有利です」。島さんは激流でも掛かった数秒後には引き抜いている

パターン4/返し抜き <体が不安定な激流の必須テクニック>

 体が不安定な激流で定番といえるのが返し抜きだ。いったんアユを後方(上流側)に飛ばすことは振り子抜きと同じだが、後方にアユが飛んだときに竿を下流側に返して(倒して)飛ばした勢いを殺しながら着水させて取り込むところがミソだ。

引き抜いたオトリと掛かりアユを、後方で静かに着水させるのが振り子抜きとの違い

 「(上から見て)ゆるい半円を描くようにアユを後方に飛ばし、着水時の勢いをなくすことで身切れのリスクを減らします。あとはアユが流されてくるときに糸をうまくつかめるか。つかめなくても、もう一度近距離で引き抜きをすれば、確実に取り込めます」

 

1、体勢を整えて竿を立てる

 野アユが掛かったら体勢を整えてから一気に竿を立てる。

 

2、竿を傾けてアユを抜く

 竿を少し右に傾けて(左岸の場合)アユが自分の横を通過するよう意識して抜く

 

3、半円を描くようにアユを飛ばす

 自分の右側(左岸の場合)で緩い半円を描くように、アユを吊り上げながら後方に飛ばしていく。

 

4、竿を下流側に倒して勢いを止める

 アユが自分より後方に移動したところで、下流側へ竿を斜めに倒してアユが飛んでいく勢いを止めにかかる。

 

5、アユを静かに着水させる

 飛んでいくアユの勢いを止めて、後方で静かに着水するようにする。

 

6、オトリを持ち上げながら下らせて糸をつまむ

 着水後、オトリを水面上に持ち上げながら自分の前まで下らせて糸をつかむ。

 

7、糸をつまんでタモに吊り込む

 糸を持ってタモの中に吊り込む。水中糸をつかむと切れることがあるので注意。

 

【ワンポイントアドバイス】

激流に立ち込んでいると、返し抜きをしてアユを下らせてきても糸がつかめないことがある。こんなときは、近距離で普通に引き抜けば確実にキャッチできる

 

2020/05/14

この記事はアユ釣りマガジン2012に掲載されたものを改訂、再編集しています

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