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小澤剛はなぜ背バリを付けるのか

最強トーナメンターが覚醒した理由に迫る【1】

編集部=撮影・文

  • テクニック
小澤剛はなぜ背バリを付けるのか

 小澤剛さんは近年の背バリ使いにもっとも大きな影響を与えた存在だ。しかし、背バリを付けさえすれば釣果が伸びるというわけではないし、背バリだけがその強さの秘密ではない。ではなぜ、小澤さんにとって背バリは強力なアイテムになり得たのだろうか。その理由を探った過去のインタビューをご紹介。

ーー 背バリの話に入る前にお聞きしたいのですが、小澤さんの水中糸は5m、目印はほとんど上にセットしていることが多いと思います。これまで漠然と「小澤さんは引き釣りだからベタ竿が多い」と解釈していましたが、竿を寝かせる必要がないようなポイントでベタ竿にすることも多いですよね。それはどうしてですか。水中糸を多く水に浸けることを意識してるのでしょうか。

 水中糸を水に浸ける意識はないんですが、たくさん浸ければ抵抗になるからオトリが横へ逃げにくくなるとは考えられますね。
 竿を寝かせることに理屈を付けるとすれば、多分、僕は少しテンションが強いんだと思います。それは微妙なところだと思いますよ。竿が立てば立つほど同じテンションなら浮きやすくなりますから。
 昔ほどグイグイ引かないけど、今はカミへ引き上げる意識を持つか、持たないかという感じです。意識が強く、長くなれば、(上に)引くと浮くので竿は寝かせます。前に比べると大ざっぱに分けているんですよ。

ーー 小澤さんがほかの人と決定的に違う点をあらためて考えると、そこではないかとも思うのですが。

 もしかすると…そうかもしれませんね。竿をしっかり寝かせるというか、水中糸をたくさん水に浸けるということは、意識はしてないけど、釣果につながっているかも。それが僕の釣りの大きな特徴でもあると思うんですけどね。

同じ引き釣り派の名手と比較しても小澤さんはベタ竿の傾向がより強い。もちろん狙うポイントや操作の違いによって変化はするが、水中糸を多く水に浸けようとしているのではないか?とさえ思えてしまう

ーー いろんな方に小澤さんの強さを聞くと、理由はバラバラなんですね。すべて納得できますが、どれも決定打ではない気もします。もちろんトータルですぐれているのでしょうが。ここ数年はそれが背バリに集約されがちですけど、背バリを付けるだけでは「小澤剛」になれない。それはベタ竿の釣りと密接な関係があるのかと思ったのですが。

 意識はないとしても、釣れる方法を体で身につけている部分ってあるじゃないですか?僕の場合はほとんど毎日組だから、多分、自然にムダな部分を削ぎ落としているというか…釣れるという事実だけを体がおぼえている。頭で理解しきれない部分を体がやってると思うんです。
 ただ、その中で背バリを付けて竿をしっかり寝かせるというのは、魚を釣るための、「僕の中の」大きなキーワードになっているのかもしれないですね。たとえば引き釣り派でも浅川進さんや森岡達也さんは、同じ瀬を釣るにも2人の方が竿先の位置は高いはずです。それに基本背バリは付けていないけど釣ってますよね。
 それを考えると、頭の中で理解していない部分で、僕にとってプラスアルファがあるのかもしれませんね。

ーー 無理に合わせて頂く必要はないんですよ(笑)。

 いやいや、僕もそれはすごく思って、ノートに昔書いたこともあるんですけど、引き釣り派といわれている人たちでも竿は30度くらいで、僕が「若干立て気味」というくらいの角度が多いんですよ。全員そうだったんで悩んだ時期があったんです。
 今も正解かどうかは分からないですよ。でもまったく的を外れているわけでもないのかなと思います。自分でもよくわからないけど、釣果につながっているというか。ただ、それに理屈を付けることはできない、何でか分からない…。

ーー 引き釣り派でも水中糸が短い人はいますよね。

 僕は正直いうと、結構深いポイントへ行くと5mでも竿を寝かせきれないことがあります。長良川や矢作川くらいになってくると、もっとほしいと思うこともありますね。でも、糸がもったいない(笑)。そういうときはオモリとか打ってカバーするといった感じになってきますね。

撮影をおこなったのは愛知県矢作川。このくらいの水量になると水中糸は5mの長さがほしいという

ーー 逆に上方テンションの釣りに注目されていた時期もありましたよね。

 今年(2012年)も吊り上げる操作の釣りがすごく効いたんですよ。でも放っておくと勝手に竿が寝ちゃうんです。それだけじゃダメだと思って、すごく意識的に30~45度の竿角度を採用したんですが、やっぱりそういうオトリに反応してくる野アユが多いと思ったし、石の大きな川では特に有効だと思いましたね。両方を使い分ける…たとえば、ひとつのポイントで両方やってみるとか、そうやって攻めていかないとダメだと思います。

竿を起こすとオトリの動きも変わる。ちょっとした角度の違いだが、ものすごく重要

 ベタ竿だけでも釣れるんですけど、やっぱり混ぜ合わせると効果的というか、そうしないと反応しない魚がいるもんですからね。島啓悟君や上田弘幸君みたいな釣りっていうか、それは特に石の大きな川ではやっぱり有効な気がしますね。
 島君や上田君はノーマルでやっていますけど、僕はやっぱり背バリがあった方が釣りやすい。だから木全崇博さん(恵鮎会、2012年マスターズ3位)に近いですね。
 背バリを使って45度くらいに竿を立てて、テンションをグリグリかけるというか。そっちの方がスピードは遅いですからね、その遅い釣りと、速い釣りを混ぜ合わせながら釣らないと今後はダメなのかな~と思いますね。

ーー 今の小澤さんの釣りの基本は、いわゆるインライン釣法とレベルテンション釣法が柱でしょうか?

 そうですね。最近はどちらかといえば、竿を寝かせたレベルテンションみたいな感じですね。最初は竿の角度も変えていたんです。だんだん上げたりとか、下げたりとか。今年は結構意識していたんですけどね。昨年は竿を寝かせて、テンションだけ抜いたりとか張ったりとか。

ーー 今日は?

 昨年の釣りですね。今年は、特に長良とかは吊り上げたりすることが多かったですね。30~40度に竿を立てて。効果はあったと思いますよ。

取材時はいつも通り竿を寝かせ、テンションを調整しながら操作すると野アユの反応がよかった

2020/02/26

この記事はアユ釣りマガジン2013に掲載されたものを改訂、再編集しています
肩書き等は当時のままにしていますのでご了承ください

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