小学生の頃、父親の投げ釣り用リールから8号のナイロン糸を引っ張り出し、見よう見まねで始めたのが山本雅弘さんのアユ釣りのルーツ。その時は釣果に恵まれなかったが、その後中学、高校とアユ釣りを続け、腕を磨いた山本さんに、ある転機が訪れる。
強い糸は強さに気付かない
当時入っていたクラブの先輩に「おまえはオトリを引きたがりすぎる」と言われて、ナイロン水中糸縛りでやることになりました。とにかく穂先を曲げずに思った通りに操作できるようになれ、と。それから圧倒的に釣れ始めましたね。のちに超ナイロン派の名手に出会ったことも大きかったです。
中国エリアはサンラインの水中糸を使っている方が非常に多いんですよね。よくしてくれた先輩は全員サンラインの糸を使っていました。当時の僕は安い糸を使っていたんですけど、サンラインカップに出場すると参加賞で糸をもらえるじゃないですか。
それで、使ったときはさほど強い実感がないんですよ。ただ、使い切って安い糸に戻ったときに「あれ!?」と。こんなに弱かったっけ…。
強い糸には順応していけるんですよ。使いやすいな、というくらいで気付かない。でも安い糸に戻ったとき同じようにやっていたら全部切れるんです。マイナス面はすごくよく分かりますね。一度これを味わってしまうと戻るのは無理だと思って、それから糸はサンラインですね。
ナイロンが7割
水中糸の使用割合でいえばナイロンが7割、それ以外が3割ですが、フロロはナイロンの2年後くらい、複合メタルはさらにその2年後くらいに使い始めました。
何年もナイロンでやり続けてきて、フロロを使ったときの感動たるや…。めちゃくちゃ感度がいいですね。ナイロンのときのようにフロロで大きなオバセを入れるとエビになりやすいですが、引き泳がせ、管理泳がせならフロロを好む人が多いですよね。ふわっと泳がせたいときはナイロン。目印が全部水面に着くくらいオバせるのは土用がくれのにときに効果てきめんですよ。
複合メタルは何もかも違いすぎて感度も強さも別の糸ですけど…。水量があるときやオモリを使いたいときに使います。僕はナイロンやフロロではツケ糸を付けないので、0.2号とかにオモリを付けると切れやすくなります。今日はオモリが必要だと思ったら、そのために複合メタルを張ることが多いですね。
水中糸で気を付けているのは、自分がその糸で最大限の強度を発揮できる結節をすることです。自分が糸に合わせるんです。たとえば海の釣りではサルカンを使うんですが、道糸(ナイロン)側とハリス(フロロ)側で結びを変えているんですよ。
ナイロンやフロロの水中糸の場合は、3回ヒネリの8の字結びでチチワを作って結節する方法に落ち着きました。仕上がりが気に入らなければ結び直すこともありますよ。常に結び目で切れるという人は結び方をもうちょっと工夫したほうがいいと思いますね。
あとナイロンやフロロは一日で交換します。特にナイロンの場合は吸水や伸びもありますしね。アユが掛かって石に擦れたりしたときは結び直します。そうすれば、よほどオーバーサイズでなければ竿をちゃんと曲げられる角度で引っ張っているときに切れることはないと思います。
エステルの可能性
エステルは撮影時に使ってみて感度もよかったですし、もっと使い込んでいきたいですね。複合メタルがメインの人も使いやすいかもしれません。実際に使うまではあまり強い糸ではないというイメージがあったんですが、アジングでの経験と今回で十分に使える強度はあると思いましたね。
ナイロンは伸びるので切れるタイミングが分かりやすいですが、今後はエステルの切れるタイミングをつかめば、もっと幅が広がるというか主力になってもよさそうな感触はありました。このあと大会があるので、そこでも使ってみたいですね。