アユ釣りマガジン on sight

鋭角釣法をマスターしよう

現在のブームの先駆けとなった近代引き釣りの原点

解説=浅川進 

  • テクニック
鋭角釣法をマスターしよう

現在の引き釣りブームの起爆剤となったのが、浅川進さんの得意技である「鋭角釣法」である。竿でオトリを引っ張るのではなく、構えを一定にして釣り人が自ら動いてオトリを操るのが、それまでの引き釣りとは大きく異なっており、発表当時は大きな衝撃だった。今では引き釣りのスタンダードといえるこの釣りを浅川さん本人に解説いただいた。

鋭角釣法とは/ 穂先とラインを鋭角にしてオトリを引く

 様々な釣り方がある中で「引き釣り」がトーナメントで戦う上では強いと私は思っています。私がトーナメントで勝ちまくっていた頃は、引き釣りに適した竿がまだ存在しませんでした。そんな中でオトリをスムーズに引くには、竿とラインの角度を鋭角にし、竿の弾力を最大限に生かした引き釣りをすることだと閃いたのです。これが「鋭角釣法」です。

瀬の中のナワバリアユをテンポよく掛けていくのが鋭角釣法。手元にダイレクトに伝わるアタリがたまらない

 今では竿が勝手に理想のオトリの動きを演出してくれる時代になっています。ただ、安定してオトリをスムーズに引ける角度が鋭角であることは間違いありません。

どんなときが効くのか/ 7月中旬以降の瀬を中心にテンポよく掛ける  

 鋭角釣法とはナワバリアユをメインターゲットとし、1カ所で粘らずにテンポよく掛けていく釣りです。ですからアユが成熟して、ナワバリをもっていないと威力が十分には発揮できません。時期的には7月の中盤から9月までのアユの活性が一番高くなる時期です。

瀬の中のアユはナワバリ意識が強いから、ツボにはまれば怒濤の入れ掛かりも夢ではない

 狙うポイントは活性の高いアユが好む瀬が中心になります。引き釣りの基本通り、流れの中をオトリを浮かさないように気をつけながら引き、広範囲に探ります。その中でそのときのパターンを見つけることができれば釣果アップにつながります。

理想的なオトリの状態とは/ 底付近で常に尾ビレを振る状態  

 オトリの理想の状態はシンプル。底に沈んでいて、常に尾ビレを振っていることだと考えます。その状態を保って引いていればナワバリアユがいた場合には反応があるし、いなければ反応がありません。ただこれだけのことで私は難しいことはあまり考えていません。

引き方のコツ1/まずはオトリを底まできっちり沈める

 釣り方は一様ではありません。オトリの状態や時期、川の状態などそのときの条件で変わりますが、いち早く狙ったポイントの底にオトリを沈めることを心掛けています。オトリがきっちり底に落ち着いたら、少々強引にオトリを引いても、浮かずに付いてきます。

竿先を下げてしっかりオトリを沈めてから引き上げよう

 中途半端にオトリが浮いた状態でオトリを引くと、イヤイヤしたり極端に横に動いたり流されたりします。こんな状態のときはオトリが弱る一方で釣りになりません。

 オトリの沈め方はオトリの状態で変わります。釣れたての元気なオトリであれば強引にどんな流れでも入れていけますが、弱り気味のオトリは石裏のたるみや、流れと流れの間にできた流れの弱いところから入れて、まず完全に底に沈めてから操作をしていけばうまくいきます。  

引き方のコツ2/穂先の高さはとても重要

 次に竿の角度ですが、現在では竿の性能がよくなっているので極端なシモ竿になっていない限りは、操作上そんなに気にする必要はありません。

感度の高い竿に勝るものはない

 ただ、穂先の高さは非常に重要だといえます。オトリを引くときに穂先の位置が高いと、オトリがついてくるどころか浮いてしまい、イヤイヤしたり流されたりする原因になるので、速い流れになるほどベタ竿で引くことをおすすめします。私の場合は天上糸まで水中に浸けてしまうこともよくあります。

 あとは引く強さですが、基本は常にテンションをかけておくこと。この釣りは常に感度(オトリの状態や野アユに追われた反応)を感じながらポイントをテンポよく潰していく釣法なので、感度を感じられるだけのテンションを最低限かけておくことが必要です。

 テンションの強弱は状況によって変化させます。例えばアユの活性があまり高くないときはテンションはあまりかけずに、引き泳がせ気味に少々時間をかけて攻める。活性が高い時はガンガン引いて短時間で広範囲を攻めるなどです。パターンは様々ありますから、その時の自然状況に合わせて自分自身であらゆる攻め方をやってみることが大事だと思います。

 

こんなときどうする? 鋭角釣法Q&A

Q1.オトリがついてこない

A1.目印を上げて穂先を下げる。最後はオモリや背バリを活用  

 それは流れと竿の角度や糸の角度、目印の高さなどが合っていないことが原因だと思います。私が気にしているのは目印の高さ。目印の高さが低いと、当然穂先の位置も高くなり引いてもオトリが浮くだけでついてきません。

 私の場合、目印の高さは水深の約3倍取るようにしており、深いポイントを釣る場合4mくらいになっていることもあります。それでもオトリがついてこなければ穂先が浸かるくらい穂先を下げて引く。

 それでもオトリが浮く場合はオモリや背バリなどを使って底に沈めます。オトリが底にきっちり沈めば強引に引いても案外簡単についてくるものです。

 

Q2.前アタリがあるのに掛からない

A2.釣れないアユには固執せずオトリが替わった後で狙う  

 時間が早くナワバリはもっているけれど追いきらない野アユがいる、オトリのサイズや泳ぎ方が合っていないなど様々な要素があると思いますが、私の場合は前アタリがあった場合にはある程度そのポイントで粘ります。

 しかし、あまり執着せずに反応のあったポイントを覚えておき、オトリが替わったら、またそのポイントを攻めてみたり、少し時間を空けて攻めてみるようにしています。今釣れないアユを相手にするより、今釣れるアユを探した方が効率的だと考えます。

 

Q3.うまく引けているつもりなのに掛からない

A3.掛かるアユがいない流れかオトリが底から浮いている

 その原因はポイントがずれているためだと考えます。「一に場所」とはよく言いますが、掛かるアユがいない流れを攻めているのです。

 これが最も大きな原因で、次に考えられることは、自分ではうまく引けているつもりが実はうまく引けてない。それは前述したように竿の高さが高かったり強引に引きすぎているために、オトリが弱って底に入っていないと考えられます。

 いかなるときもオトリの状態をベストに保つ工夫をしてください。オトリが最高の状態で引けているのに掛からないときは、ポイントが原因ですから不必要に粘らずに直ちにポイントを替えましょう。

 

あさかわ・すすむ 1966年生まれ。奈良県吉野川のほとり下市町に生まれ育ち幼少のころからアユ釣りに親しむ。長竿を鋭角に構える”鋭角釣法”でトーナメントを席巻し一時代を築く。ちろりん会に所属。DAIWAフィールドテスター

2023/06/30

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