もともと中部地方の言葉である「オバセ」は、「ゼロオバセ」も含めて今や友釣りの基礎用語となっている。泳がせ釣りの柱ともなるこのテクニックだが、「ところでいったいオバセって何?」と、そんな人が抱くであろう10の疑問に、泳がせ釣りのエキスパート・廣岡保貴さんがお答えします。
1.オバセとはいったい何のこと?
水中糸のフケ、たるみのことです。友釣りをする場所は、たとえトロ場でも必ず流れがあるので、水中糸を緩めると流れに押されて膨らみます。オバセとは、水面からオトリのハナカンまでのたるみだと考えています。
僕は流れが速く、複雑なときはオバセは小さめにし、流れが緩くなれば大きめのルーズなオバセを利用してオトリを泳がせていくイメージで釣りをしています。
2.オバセでオトリはどう動く?
オバセを作ると水中糸にかかる水の抵抗が大きくなります。そのため、水中糸がオトリの鼻を下流側に引っ張り、それにオトリが反発して上流に泳ぐのです。
オバセをなくしてテンションを掛けるとオトリは止まりますが、もっと上流に行かせたいときは再びオバセを入れます。オバセを大きくすると水の抵抗も大きくなりますが、水中糸がたるんでいるのでオトリは自由に動きやすいのです。
3.オバセの基本ワザを再確認する
オバセの基本をマスターしようと思えば、まずはトロやチャラ瀬など釣りやすいポイントでおこなうことです。
オバセを入れるとオトリは上流に上り、オバセをなくすと止めることができます。これは先に述べましたよね。
再びオバセを入れると上りますが、この上らせる距離を短くすれば、ポイントを細かく攻められます。逆に広範囲を探りたいときは、上らせる距離を長くします。
ポイントを細かく攻めるか、広範囲に探るかのどちらがいいかは、状況判断と経験がものをいいます。これは実地+経験あるのみですね。
オバセを入れてもオトリが動かないときは、テンションをかけてオトリの鼻を少し刺激するとよいと思います。
小石底のトロ、チャラ瀬ですべてがポイントとなる場合、基本的には、まず足元から泳がせていきます。そして一定のオバセの量で自然に泳いでもらうようにします。
4.オトリが弱ったときや野アユに追われたときは?
オトリが弱ってあまり泳がなくなってきたときは、オトリを吊り上げておいてからテンションを緩めるようにします。
すると、オトリは流されながらでも少し尾ビレを振って下に潜ります。このようにして、オトリが弱ったときほど竿を使ってオトリを泳がせるようにします。
弱くなったオトリをその場に止めておいても、まず掛かることはないということを頭に入れておくことが大切です。
泳がせ釣りで元気に上流に上っているときに、オトリが野アユに追われてスピードを上げて逃げたりしたら、そのときはオバセをなくして下らせます。
そして、もう一度ポイントの少し下に誘導し、オバセを入れて再度そのポイントを通します。再び野アユの反応があればオバセを少なくして止めて待ちます。
5.ゼロオバセの感覚が分かりにくい
ゼロオバセは、言葉通りにはオバセがないという意味です。
しかし、私の考えるゼロオバセは流れの強さにもよりますが、オバせを入れた状態からテンションを少しずつかけていき、オトリの泳ぎを「感じ始める」ときだと思っています。
別の言い方をすると、オバセを入れた状態から少しずつオバセをなくしていき、オトリが流されずに止まっている状態のことです。私はそのときをゼロオバセとしているのですが、実際にはほんの少しオバセができているとは思います。
また、このときに気になるのが穂先にかかるテンションです。ゼロオバセでは、穂先がほんの少し曲がっている状態になっています。竿先でオトリを感じるんですね。でも、この加減は言葉だけでは分かりづらい面もあるので、とにかくフィールドでたくさん試してみてください。