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私と名人【1】

村田満さんの記憶/瀧澤佳樹

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私と名人【1】

 

僕にとっては気遣いの人 激励のハガキや手紙は宝物

 釣具店のイベントとかでワーッて吠えてる師匠の姿を見ておられる人は「いつも大変やなぁ」と僕に言ってくださるんです。でも実はそうじゃなくて、師匠は僕にめっちゃ気をつかってくれてたんですよ。

 今も自分の宝として大切に残してあるんですけど、何かあったときはハガキが来るんです。あの人はアナログですやんか? 手紙とかもね、ふっとくれるんです。何の前触れもなく。僕はそれを額に入れて飾ってるんですよ、全部(笑)。

奈良県吉野川の名手でマスターズ準優勝の実績もある瀧澤さん。手紙やハガキはすべて額に入れている。仕掛け巻きは村田さんからのお礼
2017年の手紙。独特の文体で村田さんだとすぐに分かる

 一番よろこんでくれたのは、2013年にマスターズの全国決勝に出たときですね。その前の有田川の大会では同じクラブの人に場所を教えてあげて、その人より順位が下やったんですわ。いちおう上には上がれたんですけど、みんなの前では「お前、何しとんねん! ボケ、カス!!」みたいな感じで「怒られた…」と思ってね。

 あんな人ですから1位以外は2位も最下位も一緒やと言われてたんですけど、家に帰って何日か経った頃にハガキが来てね。「勝ち上がったのはよかったけど今度は鬼になれ」という内容やったんです。予選に落ちたときは「瀧澤も頑張れよ、俺もやる」みたいな手紙が来たり、そんなんは多々ありましたわ。もちろん電話もです。

2013年のマスターズ表彰式。競技委員長である村田さんとのやりとりは瀧澤さんにとって忘れられない思い出だ

 あと細かいことなんですけど、カン持ちに一緒に行ってたときに仕掛け巻きを流さはったんですわ。それで探して見つけて「師匠、ありましたよ!」と渡したんですが、3日後に仕掛け巻きを送ってくれたりね。そういう気遣いはめっちゃありました。

 僕がちろりん会に入ったのは2010年頃で年数は浅いんですわ。でも最初に師匠を見たのは高校1年のときやったんですよ。吉野川川上でマスターズの審判をしていて、そのときはただ「うるさいおっさんやな」と思っただけですね。

 前からちょこちょこ入会のことは言われたんですけど、「入ったら休みであろうがなかろうが(クラブの用事で)行かなあかん」と噂で聞いてたんですよ。「そんなんできるわけないわ」と思っていたんですが、浅川進さんが家の近所だったので一緒に連れていったりしてくれたので、それからだんだんと…。

ちろりん会のメンバーと村田さんを囲んで

 だから僕自身は大変じゃなかったし、おもしろかったですわ。師匠の家に迎えに行って、川に着くまでずーっとしゃべってくれるんですわ。仕事のことや試合の帰りなら選手についての批評もあったし。あと何に対しても「ありがとう」と言ってくれるんですわ。苦労したとか大変やった記憶がまったくないんです。

 あと予言者みたいなことも言ってましたね。優勝まで登り詰めてパッと落ちる選手もいれば、いい成績が続く選手もいますよね。それがすごく当たりました。衝撃的に「また当たった!」というのは何回もありましたね。「あいつは多分、あと何年かで落ちる」とか「あいつはしばらくいくやろうから、ドカンとやってほしい」とか、ことごとく当たりました。へーっと思って感心しましたわ。

2025/04/18

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