新年あけましておめでとうございます。今年もアユ釣りマガジンをよろしくお願いいたします。さて、2021年最初の投稿はオトリカン周りの工夫をご紹介しましょう。厳しい寒さが続く中、猛暑だった夏の日を忘れそうになってしまいますが、そんなときに気を遣うのがオトリの輸送です。
高水温期の悩みどころ
たとえばポイント移動中にオトリカン内の水温が上がりすぎてしまい、いざフタを開けてみるとアユが昇天…なんて経験は誰でも一度はあると思います。ポイントを移動する必要があるときは、要するにあまり釣れていないわけですが、こうなると移動したくてもオトリが気にかかって仕方ありません。
アユを元気な状態で輸送するには水中の溶存酸素が十分にないといけませんが、水温が高くなるほど溶存酸素は減りますし、魚が増えるにつれて消費される酸素の量も増えます。輸送中にグロッキーになるのは酸素不足にほかなりません。掛かりどころが悪い魚ほど酸素不足はこたえますし、大きくて元気な魚も多くの酸素が必要なので一時的に弱ってしまうことがあります。
この対策として一番簡単な方法はペット氷(水を入れたペットボトルを凍らせたもの)をオトリカンの中に入れておくことですが、最近の暑さが尋常ではないせいか、それでもダメなときがあります。
京都の漁師さんたちは軽トラの荷台に改造した大きなクーラーを積んでおり(複数のエアポンプがセットできるようにしてあり、中には水とペット氷を入れてある)、これだと引き舟ごと放り込んで移動できるので超便利ですが簡単にマネできるものではありません。クーラーに入れておく水も大量に必要なので、山水や川水、井戸水が簡単に汲める環境が不可欠です。
溶存酸素を増やしてしまう荒業
そんな悩みを抱えているとき、谷川光之さんの取材時に見せていただいたのがブロワーというシロモノ。これは地方で利用されている合併浄化槽や、錦鯉などを飼育する池などに酸素を供給するための、いわば巨大なエアポンプ。谷川さんの愛車はハイブリッドなので、後ろに配置されているコンセントから電源を取り、車での移動時はもっぱらこちらを利用されています。
谷川さんによれば岐阜から静岡まで、18Lのオトリカンに数十尾のアユを入れて持ち帰っても全然大丈夫だったとのこと。谷川さんは居酒屋を経営されており、お店で提供するためだったそうですが、もはや活魚輸送のレベルです。
名手の中にはブロワー愛用者が多いというのもうなずけますね。ハイブリッド車でない場合はシガーソケットからインバーターを介して電源を取ることになります。
工夫しがいのあるフタ周り
ご存じドラゴン坂本さんもブロワー愛用者のひとり。坂本さんの取材を終えてふとオトリカンのフタを見ると、極端に短くカットされたパイプにぶら下がるエアストーンが…。何でここまで短いのか???
たずねてみると、エアストーンが底に着いているとブロワーの強力な排気量によって水中のアユがかき混ぜられ傷むからだそうです。だからわざと宙ぶらりんにしているんですね。また、シマノ製のオトリカンはエアポンプを2つセットできるスグレモノですが、ブロワーで2カ所からエアーを送るとやはりアユがかき混ぜられてしまうそうです。
ブロワー使用の場合はフタ本体にも改造が必要とのこと。オトリカンのフタに設けられている排気穴を少し大きくして、さらにもう1つ穴を開けておきます。こうしておかないとフタのパッキンから空気と水がもれてしまうので要注意です。
シマノテスターつながりでは島啓悟さんの工夫も見どころありです。有名なのはオトリカンのフタにセットされたデジタル水温計でご存じの方も多いと思います。アラームをセットしておけば一定以上に水温が上がるとしらせてくれる秀逸なアイデアですね。島さんによれば低水温に保っておけばアユが底の方でジッとしているので弱りにくいとのこと。
ちなみに島さんは車での輸送時にブロワーでなく観賞魚用のエアポンプを愛用しているとのこと。島さん的にブロワーは排気量が強すぎるというのが理由です。
このように観賞魚用のアイテムには使えるものが多く、またアユ師の中には魚を飼うことを趣味にされている方も多いようです。瀬田匡志さんもメダカにハマっているそうですが、そんな瀬田さんのエアポンプから出ているパイプに取り付けらていたのがコレ。
瀬田さんは車から電源を取るタイプのエアポンプを併用されています。車にセットしたエアポンプを使用する際にはパイプをセットし直す必要が出てきますが、この分岐があればパイプを差してコックを切り替えればOKなのでとても楽です。
アユ釣りではオトリ店から直に徒歩でポイントまで移動なんてことも少なくありませんし、移動しないでじっくり楽しむスタイルもいいものです。誰にでも必要な工夫ではありませんが、オトリ輸送のひとつの手段として知っておいて損はないと思います。また、自宅に持ち帰って生かしておけば、魚を締めた後に糞を絞り出す手間が省けるので、よりおいしく食べることができます。ただし、他河川からのオトリの持ち込みに使用するのはご遠慮ください。
まだまだ寒い日が続きそうですが、オフシーズンのDIYとしていかがでしょうか。