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中部河川対策から生まれた“S釣法”

有岡只祐さん躍進の原動力、石裏の緩流帯攻略【2】

編集部=撮影・文

  • テクニック
中部河川対策から生まれた“S釣法”

 有岡只祐さんが、人工産アユと低活性時の対策をキーワードに生み出した“S釣法”。今回は緩流帯周辺のピンポイントでのオトリ操作について詳しく見ていこう。

オトリを立体的に動かす

 石裏の緩流帯と流れの筋との境界を狙うには問題もある。ここにオトリをキープして操作するのが難しいことだ。理想は緩流帯と流れの筋を、オトリがゆっくり出たり入ったり、ときには縦の動きもまじえながら立体的にフワフワと泳いでくれること。
 実際の操作は下のイラストを参照して頂きたいが、これを実現するには強いテンションでの操作はNG。ソフトに操作することで、流れの境界をスローにじっくり効果的に探ることができるのだ。

 また、この操作を実現するにはタックルのサポートも不可欠。ある程度しなやかな穂先を備え、2番、3番へスムーズに荷重が伝わるロッド。流れの抵抗を利用しやすい太めの複合メタルとツケ糸。そして背バリ。

オトリを引きやすいだけ、止めやすいだけの調子はこの釣りには向かない。中間的な操作がおこないやすい竿が求められる

 背バリを打つのはオトリを沈めたり、動きを抑えることだけが目的ではない。ひとつはオトリの姿勢。水中糸が上方に引かれたり、あるいは緩んだりしたときにも、少し頭を下げた状態を保ちながらゆっくり上下してくれるため、3D的な動きを演出できる。これがノーマルだと急激に頭を上下することがあるため、不安定な姿勢になりやすい。
 また、背バリを打つとオトリの引き抵抗が大きくなるが、これもプラスに作用する。ノーマルだと竿で与えるテンションがオトリの鼻へダイレクトに作用するため、下手をすると流れの境界からオトリが外れてしまいやすい。ある程度の引き抵抗がある方が狙いから外れにくく操作しやすいのだ(もちろん穂先が大きく曲がるようなテンションは与えないが)。

背バリはオトリを流れに入れるためだけのアイテムではない。ハナカンの1点でオトリを引くのと、背バリとの2点で引くのとでは、オトリの動きがまったく異なる

 強いテンションの引きでも、大きくオバセを出す泳がせでも不可能な操作を実現するこの釣りは、バリバリの引き釣り派であった有岡さんの意識を大きく変えた。
 キーワードは「ソフト(soft)」「スロー(slow)」「背バリ(sebari)」。少し強引だが、頭文字を取って「S釣法」と呼ばせてもらおう。

水中糸の抵抗を利用する

 そんな有岡さんの釣りを見て気付かされるのは、S釣法はもちろん、引き釣りも以前とは少し異なる操作が増えてきたこと。それまではベタ竿が多かったのだが、ほんの少し起こしてテンションも緩め気味にしていることが多い。
 水中糸は複合メタルの0.07号が標準。16~18cmの魚には太いかもしれないが、もちろんこれは水中糸の抵抗を利用するためだ。だから釣れる魚が大きくなくても、複合メタルの0.07~0.1号に下ツケ糸0.4~0.5号という組み合わせが多くなったという。
 また、水切れがよい糸(たとえば高比重のメタル)は、この釣りの場合オトリの近くで糸フケが出やすくエビになりやすい。掛けバリも軽すぎると吹き上げられて絡むことがあるそうなので注意したい。

S釣法は普段の引き釣りにも影響を与えた。テンションを抑えた操作で渇水の栃木県那珂川を攻略した

 流れの境界でオトリをフワフワ操るなら、ナイロンやフロロカーボンの水中糸ではダメなのか?という疑問も湧いてくる。が、この問いには「石に巻かれるのが怖い」と答えた。そもそも石の大きなポイントでこそ効果を発揮するのがS釣法だから、リスクは最小限にしておきたい。
 有岡さんは2015年にマスターズの頂点に立つが、2012年からの数年間にも進化の跡が見られる。背バリの接続糸はフロロカーボンから手芸用のオペロンゴムへ、そしてPEラインで現在は落ち着いているようだ。このあたりの話はまた次の機会に…。

2020/02/26

この記事はアユ釣りマガジン2013に掲載されたものを再編集しています

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